〇〇の本棚

広告界のレジェンドによるおススメ本シリーズ第2弾!

福里 真一 (ふくさと しんいち)
CMプランナー/クリエイティブディレクター/コピーライター
1968年鎌倉生まれ。一橋大学社会学部卒業後、92年電通入社。2001年よりワンスカイ所属。いままでに1500本以上のテレビCMを企画・制作している。主な仕事に、ジョージア「明日があるさ」、富士フイルム「フジカラーのお店」、サントリーBOSS「宇宙人ジョーンズ」、CRAFT BOSS「新しい風」、トヨタ自動車「こども店長」「ReBORN」「TOYOTOWN」、ENEOS「エネゴリくん」、東洋水産「マルちゃん正麺」、ゆうパック「バカまじめな男」など。著書に『電信柱の陰から見てるタイプの企画術』(宣伝会議)、『困っている人のためのアイデアとプレゼンの本』(日本実業出版社)など。

「複眼の広告クリエイター」になるための5冊

「糸井重里の萬流コピー塾」(文春文庫)

糸井重里 著 | 文藝春秋 | 1988年 3月刊

毎週糸井重里さんがコピーのお題を出し、それに対して一般読者から応募されてきたコピー作品を紹介していく、かつての週刊文春の人気連載の文庫化。まさに、ひとつのお題に対して、どれだけ多くの「視点」があり得るかが、ダイレクトに学べる。当時無名の応募者の中には、いまやコピーライターの大御所になった方々の名前もチラホラ。
※私がコピーライターをはじめた頃、本当に何度も何度も読んだ本です。

「複眼の映像」私と黒澤明(文春文庫)

橋本忍 著 | 文藝春秋 | 2010年 3月刊

黒澤明監督の代表作「七人の侍」や「生きる」にかかわった脚本家が、黒澤映画の脚本がどのように作り上げられていったかを克明に語る。複数の脚本家による、共作システム。まさに、複数の「視点」がぶつかり合うことで、意外性のある、おもしろい脚本が生み出されていったことがわかる。
※広告もひとりだけの視点でつくりすぎると、完成度は高くてもちょっとせまい感じのものができる、という実感があります。

「母なる夜」(白水Uブックス)

カート・ヴォネガット 著 | 池澤夏樹 訳 | 白水社 | 1984年 6月刊

ナチスの戦争犯罪人として裁かれようとしている人物のアイロニカルな人生。彼はナチなのか、反ナチなのか。「視点」が変われば評価も変わる。そして、それらすべてが、天という「視点」に立ってしまえばどうでもよくなる、というカート・ヴォネガットらしいニヒリズムが漂う小説。
※カート・ヴォネガットは大好きで、私が企画している缶コーヒーBOSSのCM「宇宙人ジョーンズ」シリーズにも少なからず影響を与えている気がします。

「自由からの逃走」

エーリッヒ・フロム 著 | 日高六郎 訳 | 東京創元新社 | 1951年 12月刊

人間が歴史上かつてないほどの自由を獲得した時、なぜ全体主義は生まれたのか。自由だからこそ、自由から逃走したくなる、という人間の不思議さを解き明かした社会心理学の古典。人間というのは一筋縄ではいかない生き物だなあ、と思わず自分の中の「視点」のゆらぎを覚える名著。
※一応私、大学では社会学的社会心理学を専攻しておりました…。

「山田風太郎明治小説全集」1~14 (ちくま文庫)

山田風太郎 著 | 筑摩書房 | 1997年 5月刊~12月刊

明治維新の東京を舞台に、近代化を推進しようとする人々と、旧幕時代を引きずる人々が対決する。そしてそこに、その時代のさまざまな歴史上の有名人たちが、意外な形でからんでいく。明治維新に取り残されていく人々の「視点」で描くと、明治はこう見える、という新鮮な印象を与える小説群。
※とにかくおもしろいので夢中になって読みました。時代にうまくなじめない側の視点で書かれたものに共感しがちなのは、やはり自分がそっち側だからなんでしょうね。そんなこと言ってると仕事こなくなりそうですが。

さらに、読書欲がわいてきた方へ。よろしければ、あと15冊

「定本 日本の喜劇人」

小林信彦 著 | 新潮社 | 2008年 4月刊

エノケン・ロッパから萩本欽一・伊東四朗まで。小林信彦さんの、日本の喜劇人たちを見る「視点」。「視点」を持つことで、漠然と見ていたのでは見えなかったものが見えてくる。

「志ん朝の落語」1~6

古今亭志ん朝 著 | 筑摩書房 | 2003年 9月刊~2004年 2月刊

江戸弁の美しさ。とても自然に進んでいくストーリーテリングの心地よさ。志ん朝さんはどんな「視点」で、江戸人たちの価値観を切りとったのか。

「小津安二郎作品集」Ⅰ〜Ⅳ

井上和男 編 | 立風書房 | 1983年 9月刊~1984年 3月刊

小津安二郎監督作品の脚本を完全収録。説明しすぎないセリフの巧みさ。同時代の等身大の人間を描き続けた、小津安二郎さんと脚本家たちの「視点」。

「タンポポ・ハウスのできるまで」「我輩は施主である」

藤森照信 著 | 朝日新聞社 | 2001年 8月刊
赤瀬川原平 著 | 読売新聞社 | 1997年 8月刊

まるで土から生えているかのような独自の建築を模索する、建築家・藤森照信さん。藤森さんの自宅であるタンポポ・ハウス(屋根にタンポポが生えている)、そして、赤瀬川原平さんの自宅であるニラ・ハウス(屋根にニラが生えている)がどのようにつくられていったのか。建築家と施主、それぞれの「視点」から、その制作プロセスを描く。

評伝ナンシー関「心に一人のナンシーを」

横田増生 著 | 朝日新聞出版 | 2012年 6月刊

消しゴム版画家・ナンシー関さん。タレントたちの特徴をとらえた消しゴム版画と、そこに添えられる恐ろしいほどに本質をついたひと言。まさに「視点」のかたまりのような人でした。

「『坊っちゃん』の時代」第一部〜第五部

関川夏央・谷口ジロー 著 | 双葉社 | 1987年 7月刊~1997年 8月刊

「坊っちゃんの時代」という「視点」から、明治という時代を描き出した漫画作品。「坊っちゃん」という小説のもつ明るさと暗さ。それがそのまま、明治という時代に重なる。

「ミッドウェー海戦」 第一部・第二部

森史朗 著 | 新潮社 | 2012年 5月刊

教科書では「日本海軍はミッドウェーで敗北した」としか教わらないミッドウェー海戦。細かい事実を積み重ねて、なぜ負けたのかを解き明かしていく。ディテールをゆるがせにしないミクロの「視点」から、全体が見えてくる。

「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」

加藤陽子 著 | 新潮社 | 2016年 7月刊

栄光学園の中高生を相手にした歴史講義。日本近代の5つの戦争を題材に、なぜ当時の日本人が合理的な判断を重ねた結果として戦争を選んだのかを解き明かす。その時代の「視点」に立たないと歴史は見えてこない。

「第三帝国の興亡」 1〜5

ウィリアム・L・シャイラー 著 | 松浦伶 訳 | 東京創元社 | 2008年 5月刊~2009年 4月刊

ヒトラーに率いられた、ドイツ第三帝国。狂った独裁者の暴走と決めつけず、ナチスによる支配を生み出した背景を、多層的な「視点」で描き出す。

「ベスト&ブライテスト」上・中・下

デイヴィッド・ハルバースタム 著 | 浅野輔 訳 | 朝日新聞社 | 1999年 7月刊

ケネディ政権に結集した、アメリカ最高峰のエリートたち。彼らはなぜ、ベトナム戦争の泥沼にはまり込むことになったのか。誤った判断が繰り返される背景を、エリートひとりひとりの「視点」から描いていく。

「悪童日記」「ふたりの証拠」「第三の嘘」

アゴタ・クリストフ 著 | 堀茂樹 訳 | 早川書房 | 2001年 5月刊、 2001年 11月刊、 2002年 3月刊

戦争に翻弄される、とある兄弟の物語。過酷な運命が、一切の感情を排した、冷静な「視点」で語られる。それは真実なのか、壮大なフィクションなのか。

「ひとびとの跫音」上・下

司馬遼太郎 著 | 中央公論社 | 1983年 9月刊~10月刊

歴史上の人物を描きつづけた著者が、市井に生きるごく普通の人々を描いた異色作。どんな人の人生もそれぞれに情趣がある。そしてその情趣を見つけ出すのは、「視点」に他ならない。

「サルでも描けるまんが教室」①~③

相原コージ・竹熊健太郎 著 | 小学館 | 1990年 11月刊~1992年 6月刊

もしかすると、すぐに役立つという意味では、この本が一番かもしれない。企画をするという作業にとって大切なことが、ここにはすべて、「サルでもわかるように?」描かれている。

「クリエイターズ・トーク」13人のクリエイティブ講義

天野祐吉 編 | 青幻舎 | 2012年 8月刊

今は亡き天野祐吉さんが、東京大学福武ホールに13人の広告クリエイターを招いて行われた、連続対談。広告クリエイターそれぞれの、「視点」の違いが見えてくる。

「電信柱の陰から見てるタイプの企画術」
CMプランナー福里真一が書きました「困っている人のためのアイデアとプレゼンの本」

福里真一 著 | 宣伝会議 | 2013年 10月刊
福里真一 著 | 日本実業出版社 | 2014年 6月刊

どさくさにまぎれて、こんな本も入れさせていただきました。子供の頃から、仲間に入れずはじっこの方にいた著者(私です!)。そんな、電信柱の陰から見るという「視点」が、広告の企画という仕事にどう生かされているのか、いないのか。箸休めにどうぞ。