錦絵
一般に錦絵とは、木版多色摺りの浮世絵版画のことをいい、江戸中期に鈴木春信などによって完成されたといわれています。「見当」と呼ばれる、今日の印刷の「トンボ」にあたる技法を開発したことによって、多彩な色彩表現と量産が可能になり、錦絵は飛躍的に発展しました。浮世絵から発した錦絵は、当初は歌舞伎や遊里の絵が中心でしたが、後には町人の日常生活を描いたものまで多様な作品が制作され人気を博しました。江戸時代の錦絵イコール広告媒体ということはできませんが、中には名所図会の中にさりげなく看板を入れたもの、店頭風景そのものを錦絵にしたもの、各種の錦絵に意図的に店の名前や商品名を描き込んだと思われるもの、人気歌舞伎役者のブロマイドのような錦絵に商品を入れ込んだり歌舞伎絵の口上に商品メッセージを埋め込んだものなど、情報メディアとしての錦絵に注目した江戸商人たちが錦絵の版元と手を結び、宣伝活動に利用していたと考えられます。明治時代に入ると錦絵は次第に衰退の兆しを見せ始めますが、一方では世相を伝える新聞の役割を果たす錦絵新聞や、広告の役割に特化された、今日のポスターに通じる錦絵が登場します。
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